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東京高等裁判所 昭和34年(ネ)2561号 判決

判  決

新潟県新潟市平島一七四番地

控訴人

医療法人青山信愛会

右代表者理事長

長谷川寛

同所同番地

控訴人

社会福祉法人新潟県更生慈仁会

右代表者理事長

長谷川寛

右両名訴訟代理人弁護士

安藤剛

伴純

東京都港区芝公園六号地の一

被控訴人

中央労働委員会

右代表者会長

藤林敬三

右指定代理人

川端良平

大久保秀雄

右訴訟代理人弁護士

小林直人

右当事者間の労働委員会命令取消控訴事件について、次のとおり判決する。

主文

本件控訴はいずれもこれを棄却する。

控訴費用は控訴人等の負担とする。

事実

控訴人等訴訟代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が中労委昭和三二年不再第一四号不当労働行為再審査申立事件について昭和三二年一二月一八日付でした控訴人等の再審査の申立を棄却する旨の命令はこれを取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

立証(省略)

理由

控訴人等が本訴において取消を求める被控訴人中労委の本件命令には、原判決が説示していると同一の理由によつて、事実の誤認も法律上の判断の誤りもないものと判定したので、この点に関する原判決の理由を引用する。

ただ、当裁判所は、原審が本件のような精神病院の従業員によつて行われた争議行為が違法なものであるかどうかを決めるについては、当該争議行為だけに着眼して判断すべきでなく、使用者のとつた態度すなわち控訴人等が本件争議に際し代替要員の獲得に努力したかどうかも考慮の中に入れなければならない旨の判断(原判決二六枚裏六行目以下)については、次のように改める。すなわち原審は本件争議行為の正当性の有無を使用者たる控訴人等の争議中における病院管理上の対策如何にかかわらしめているけれども、かかる使用者側における争議中の病院経営の管理態度の如きは、争議行為の正当性の有無には影響を及ぼさないものと考える。もしそうでなければ、正当に開始された争議行為が、その後の使用者側における病院の管理、運営の巧拙如何により、あるいは違法な争議行為となり、あるいはその正当性を持続するというのも納得しかねるところであるし、かつその正当性の有無に影響を来たすべき時期を確定することに困難を生ずるであろう。従つて、控訴人等が代替要員の獲得に凡ゆる努力を尽したと主張し、その立証をしようとしているが、右に述べた理由によつて、かかる事実によつては本作争議行為の違法性を認定することはできないし、またかりに、当時いかに努力しても代替要員を得ることのできない客観情勢にあつたとしても、同様である。従つて控訴人等の当審における新たな立証によつては、原判決の結論を左右するに足りない。他に本件争議を違法とするなんらの理由がない。要するに原判決が具体的に認定した労務拒否の争議行為は原判決が認定した病院の状況からしても未だ以て病院労務者の争議行為として正当な範囲を逸脱した違法性のある行為とは判断できない。

結局、被控訴人の命令には違法がなく、これが取消を求める控訴人等の本訴請求を棄却した原判決は相当で、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第九民事部

裁判長判事 角 村 克 己

判事 菊池庚子三

判事吉田良正は転任につき署名捺印することができない。

裁判長判事 角 村 克 己

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